第1回 「間違った事後保全」していませんか?(1)
本コラムについて
本コラムでは、設備保全の実務に役立つ考え方や具体的な取り組み方法を紹介します。
設備保全というと、「設備が故障したときに修理する仕事」というイメージを持たれることが多いですが、本来の役割は設備を壊さないように管理し、生産設備を安定して稼働させることにあります。
しかし実際の現場では、設備トラブルへの対応に追われ、計画的な保全活動や改善活動に十分な時間を確保できていないケースも少なくありません。保全ラボは、これまで多くの工場で設備トラブルの原因調査や保全活動の改善支援を行ってきました。本コラムでは、そうした実務経験をもとに、現場で実践できる設備保全の考え方や改善のヒントを紹介していきます。
良い設備保全員の条件
さて、皆さんは「良い設備保全員」とはどのような人だと考えていますか?
一般的に、「故障した際に素早く修理できる人」が良い設備保全員だと思われることが多いですが、保全ラボはそれだけでは十分ではないと考えています。中国の兵法書『孫子』には、「兵は詭道(きどう)なり」や「勝兵先勝ち(しょうへい まずかち)、敗兵先敗す(はいへい まずはいす)」という言葉があり、戦いを避けて事前に勝利を収めるべきだという教えがあります。この教えは設備保全にも通じるものです。
つまり、一流の設備保全員とは、故障を未然に防ぎ、設備を常に安定稼働させることができる人だと私たちは考えています。修理や復旧が得意でも、事前にトラブルを回避できる能力がなければ、一流の保全員とは言えません。
なぜ、工場の設備保全員は疲弊するのか?
多くの工場現場では、設備トラブルが頻繁に発生しています。その結果、保全担当者は日々呼び出され、迅速な復旧が求められ、心身ともに疲弊しています。このような状況が常態化するのは保全員の実力不足が原因だとされることもありますが、実際には保全員は十分な修理の能力を持っている場合が多いのです。
それでは、なぜ故障対応に追われる日々が続くのでしょうか? それは、設備を壊れないように管理するための保全技術のノウハウが不足していることが一因です。例えば、バスタブ曲線を時間計画保全(TBM:Time Based Maintenance)の有用性を示す図であると誤認している設備担当者も少なくないと聞きます。
※バスタブ曲線とは、設備の故障率の時間変化を示したもの。縦軸に故障率、横軸に時間を示したグラフ
※時間計画保全(TBM)とは、時間や使用期間で区切って定期的に保全を行う管理方法。
事後保全の種類は二つ
「事後保全」は、設備が故障した後に修理を行う保全方式で、「緊急保全」と「通常事後保全」の二種類があります。「事後保全」に対して悪いイメージを持つ人も多いですが、この保全方式には設備の維持コストが低いというメリットがあります。そのため、設備の維持コストを減らしたい工場では、設備の重要度に関係なくほぼ全ての設備で事後保全となっている場合があります。
しかし、事後保全のコストメリットは限定的です。それは、故障しても生産ラインに大きな影響を与えず、迅速復旧の必要のない設備の「通常事後保全」の場合にのみ有効だからです。
「間違った事後保全」から脱却しよう!
本コラムの連載の目的は、大きく二つあります。
第一の目的は、多品種製造工場における設備保全の実践的なノウハウを提供することです。誤用されやすい専門用語をやさしく解説し、設備の重要度や保全方式の設定方法を紹介します。
そして、第二の目的は、工場の経営者や責任者に対して、正しい設備保全の効果とその重要性を理解してもらい、必要な施策や予算配分の意思決定に役立ててもらうことです。
私たちが実践すべきは、故障を未然に防ぐための予防保全を計画的に実施し、「間違った事後保全」から脱却することです。
24回の連載を通じて、読者の皆さんがより効率的で安定した生産を実現できるよう努めて参ります。
※本記事は大阪府工業協会機関誌に掲載された内容を再編集したものです。
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執筆 保全ラボ編集部
設備保全への正しい認識と現場で役立つ実践的なノウハウを保全コラムにて提供しています。最新の設備保全情報・トレンドを継続的に発信することで、設備保全業界の皆様にとって良い情報入手の場になることを目的としております。
また、保全ラボの提供する設備保全へのコンサルティング・業務改善・教育についてご紹介します。
