第15回 振動センサーは現場の負担を軽減するか?! (後編)
■ 振動センサー導入の2つのポイント
振動センサーを導入すれば自動的に効果が出るわけではありません。ポイントを押さえて取り組むことが重要です。
ポイント(1)導入時の検討・設計
・対象設備の選定:故障時の影響が大きい生産設備から優先的に導入する
・故障モードの想定:設備ごとに劣化の部位や現象を予測する。その後、対応する状態監視方法を選定する
・センサーの設置方法:一般的に3軸が望ましいと言われているが、壊れる部位に近い強固なフレーム(構造部)にセンサーの取り付けを推奨する
・測定頻度と閾値設定:初期段階ではISO規格(ISO 10816/20816)やメーカー推奨値を参考にしつつ、工場の実績データで調整する。閾値は固定ではなく、定期的に見直す。
・フィードバック:整備後の部品状態を記録し、次回の閾値や測定方法に反映することで精度を高める。
ポイント(2)人材教育
・重要なのは「対策を考える力」:データを読むこと自体は外注も可能ですが、得られた結果をどう解釈し、どの整備や改良につなげるかは自社で判断する必要があります。
・リーダーを育てる:すべてを外注するのではなく、社内に基本的なリーダーを育成することで、診断結果の内容を正しく活用できます。
・属人化を防ぐ仕組み:測定報告書やトラブル報告書などで明文化し、組織として共有することで、人が変わっても知識が継承されます。
■ 振動センサーに工数削減の効果は少ない
ここまで振動センサーの有用性を説明してきたように、状態基準保全(CBM)は確かに突発故障を減らす力を持っています。しかし、それがそのまま現場の作業件数の大幅な削減につながるわけではありません。それは、工数削減や省人化への効果が限定的であるためです。ここで、CBMによる現場への影響を見ていきましょう。
まず、CBMを導入すれば「無駄な点検」は減ります。従来の時間基準保全(TBM)では、寿命のばらつきが大きい部品でも一定周期で交換していたため、まだ使える部品を外してしまうことがありました。振動センサーを使えば、状態を把握しながら交換時期を判断できるため、このような無駄を防ぐことができます。
しかし、その一方でセンサーが示す異常兆候に対応するための整備はむしろ増える場合があります。今まで見逃していた小さな劣化が「予兆」として検出されるからです。その結果、検討や調査の件数が増え、整備作業も横ばいか、場合によっては増加することすらあります。したがって、「CBM=工数削減・省人化」と考えるのは過大評価と言えるでしょう。
では、どのようにして、総作業件数を減らすのか。それは、恒久対策、すなわち改良保全や標準化との組み合わせが欠かせません。例えば、芯出し基準を標準化してミスアライメント(芯ずれ)を防ぐ、あるいは部品材質を強化して再発を防止する、といった取り組みです。これらを積み重ねてこそ、総作業件数そのものを減らすことができます。
CBMは万能ではありませんが、それでも振動センサーは現場にとって有用です。比較的導入が容易であり、現状の保全水準に関わらずスタートできます。特に重要設備から小規模に始めることもできるため、成功体験を積み上げながら組織全体への展開もさせやすくなります。
読者の皆さんも、ぜひ一度、導入を検討してみてください。確実に突発停止を減らし、安定したものづくりを支える手段になるはずです。
※本記事は大阪府工業協会機関誌に掲載された内容を再編集したものです。
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執筆 保全ラボ編集部
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