第16回 故障を減らす再発防止と水平展開 (前編)
■ 前回までの振り返りと今回のテーマ
第14回、第15回は、CBM(状態基準保全)の有用性と限界を紹介しました。設備の状態監視を行えば、突発停止の前に、予兆を捕捉することができます。しかし、作業件数の低減はできません。では、現場の故障件数と作業件数を減らすためにはどうすればよいのか。
それは、再発防止(恒久対策)の実施です。今回は、故障の再発防止の方法と水平展開の重要性について解説します。
■ 2種類の修理:JISの定義
故障した設備を修理することについて、JIS Z8141:2001(生産管理用語 6302)では、次のように分類しています。
・小修理:応急対応による現状復旧のみ
・完全修理:①に加え、原因調査・恒久対策
小修理は「壊れたものをとりあえず動くように直す」対応で、その場の操業は確保できますが、同じ故障を繰り返す恐れがあります。一方、完全修理は復旧と同時に原因を突き止め、再発を防ぐ恒久対策まで行うものです。
この違いが生産の安定性を大きく左右するため、JISはあえて2つを明確に分けています。つまり経営効率を上げるには、小修理と完全修理の件数を区別して管理し、必要なところに適正な時間とお金をかけて完全修理を行える体制を作らなければならない、ということです。
■ 再発防止体験
ある設備管理員の新人だった頃のお話です。ある送風機が数か月ごとに故障し、止まるというトラブルに悩まされました。その都度、ベアリングを交換すれば一時的に動きますが、しばらくするとまた同じ不具合が発生していました。当時は原因がわからず、「とにかく直して再稼働させる」ことに必死だったそうです。
先輩に相談すると、荷重計算を行うように助言されました。実際に、ベアリングにかかる荷重を数値的に確認したところ、使用していたベアリングの選定が不適切であることがわかりました。そこで、適正なサイズに更新したところ、繰り返す故障は収まりました。さらに、同型の送風機にも展開した結果、類似のベアリングトラブルも半減しました。
この経験から、設備を安定させるには、故障原因を突き止めて恒久対策まで行う「完全修理」が必要であることを強く実感したそうです。
■ 水平展開は故障を未然に防ぐ仕組み
完全修理によって得られた知見を1件限りで終わらせるのは非常にもったいないことです。対策を水平展開すれば、1つの対応から、工場内にある潜在的な故障を減らすことができます。
水平展開する範囲は、以下の通りです。
・類似する設備や部品
・類似する工程
・類似のする点検や整備などの保全作業
・日常点検票や潤滑管理表などの共通フォーマットやチェックリスト
例えば、先ほどの送風機のベアリング改善事例は、他の送風機にも適用しました。これはAのパタンで展開できたケースです。故障の原因究明は1回でみると、手間と時間がかかる活動です。しかし、故障の対策を水平展開し、適用範囲を広げることで、将来の故障を未然に防ぐ活動となります。
つまり、水平展開とは、1件の故障で得られた知見を、他の設備や工程に応用して全体の故障削減につなげる取り組みなのです。
水平展開を効率用行うためには、類似の設備や部品、共通する作業などが整理されている必要があります。つまり、設備の使用や用途をまとめた機器リストや設備構造がわかる図面。こういう情報にすぐアクセスし、検索して調べられる。同様に、保全履歴をしっかりと記録しておくと、類似の保全作業も調べやすくなります。このような情報整理が進んだ職場だと、水平展開を進めやすいです。
つまり故障を減らすという観点でも、設備の情報整理は重要なため、機器リストや図面は、常に最新にしておく必要があります。しかしながら、これら設備情報の資料を最新に保つのは、それなりの工数が必要になり大変です。そのため、図面のデータ化を外注化したり、情報整理のためにスポット的に人を雇ったりする会社も見受けられます。
※本記事は大阪府工業協会機関誌に掲載された内容を再編集したものです。
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執筆 保全ラボ編集部
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