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第11回 「バスタブ曲線信仰」にご用心(前編)

バスタブ曲線の落とし穴

 

保全ラボが工場の方々とお話しする中で、企業の社内教育で本来『誤り』とされていることが、現場では『正論』として根づいているケースが多いことに気づきました。

 

そのため、今回はバスタブ曲線の正しい理解を中心テーマとして、設備の故障の仕方と保全方式(TBM)について紹介します。

 

保全方式の基本のおさらい

 

保全方式は、保全作業を実施するタイミングのことで、BDM、TBM、CBMの3つに分けられます。

 

・BDM(Breakdown Maintenance)

設備が壊れてから対応する「事後保全」。故障による生産停止リスクや損害が大きい場合には適しません。

 

・TBM(Time-Based Maintenance)

一定の時間や使用回数を基準に定期的に整備を行う「時間計画保全」。一般的な予防保全の手法です。

 

・CBM(Condition-Based Maintenance)

異音や振動、潤滑油などを管理して、設備の状態を監視し、異常の兆候が確認された際に、保全を計画する「状態基準保全」です。

どの方式が適しているかは、対象機器の特性や故障時に工場に及ぼす影響度合に依ります。

 

ちなみに、この『設備の重要度や影響度に応じて保全方式を使い分ける』という考え方をさらに体系立てたものに、リスクベースメンテナンス(RBM)というものがあります。RBMは、BDM・TBM・CBMのように保全を実行する方法そのものではなく、設備を部位・部品単位でさらに細かく分解し、それぞれの重要度やリスク(故障の起こりやすさ×影響の大きさ)に応じて、最適な保全方式を割り当てていくという考え方です。

 

TBMはかつて最も有用と考えられていた

 

設備保全の歴史を紐解くと、TBMが広まったのは1950年代で、故障率曲線がバスタブ曲線のように示されると信じていたからです。

 

現在でも、TBMは経年劣化や寿命が明確な機器に対して予防的な整備に用いられています。

 

TBMが有効なのは、劣化が時間とともに進むものの、状態を直接把握するのが難しい部品や設備です。そのため、予防的な整備や交換が求められます。例えば、フィルターや潤滑油、劣化把握が難しい電子部品などがあげられます。

 

バスタブ曲線は全体の10%未満

 

バスタブ曲線は、新品初期の故障、安定稼働期、老朽化による摩耗という3段階を示す故障率曲線です(図)。バスタブ曲線の思考は「人間の死亡率」と似ています。設備も幼少期や老年期の死亡率は高く、成人期の死亡率は低いと考えると理解しやすいです。

 

一見もっともらしいこの図ですが、実は現在では、このパターンに当てはまる設備は全体の10%未満にすぎないことが明らかになっています。これは、TBMが効果を発揮する設備、言い換えると、保全計画をTBM中心で行っても、防げる故障はわずかである、ということです。

 

図:バスタブ曲線

 

縦軸が故障率、横軸が稼働時間または使用期間。時間の経過とともに、設備や部品の故障率が上がることを示す。このような故障曲線は全体の10%未満(=TBMが有効な設備は10%未満)を意味する。

 

※本記事は大阪府工業協会機関誌に掲載された内容を再編集したものです。