第6回 製造のための5Sと保全のための5S (後編)
保全の5Sが生む本当の価値
何かことが起こる前に対処するほど、かかるコストも小さく、手間も少なくて済むこと、これこそが保全の5Sが持つ最大の価値です。
製造と比べて保全の5Sはより早い段階でのトラブル低減に効果を発揮します。品質トラブルを例にとると、実際に不良品が顕在化する前に、設備の劣化や能力低下といった兆候が現れることが少なくありません。これを早期発見し、手を打てるかどうかが、生産現場のロスを大きく左右します。
たとえば、モーターの異音や異常発熱、異常振動を早期に気づければ、部品交換だけで済み、大きな故障を未然に防ぐことができます。しかし、保全の5Sが十分でないと、気づいたときにはモーターだけでなく周辺部品まで損傷させてしまう事態になりかねません。結果として大規模な補修が必要になり、生産ラインが何日も止まるという最悪のケースにもつながります。
保全の5Sを浸透させる方法
保全のための5Sの目標は「設備を壊さない」「火災や漏洩などの安全リスクを防ぐ」などであり、うまく機能しているうちは「何も起こらない」のが当たり前です。そのため、「特に支障がないのなら、今のままでもいいんじゃないか」となりやすいのが実情です。そこで、保全の5Sを推進するためのアイデアをいくつか挙げます。
早期発見賞で評価
設備の小さな異常を早期に見つけた人を「早期発見賞」として表彰する仕組みを設けます。安全のヒヤリハット(事後に至らなかった危険な出来事を社内で共有する仕組み)と似ていますが、設備の異常は放置すると設備故障や品質不良の元です。異常を早期に発見できることの価値や意義を現場の文化として醸成することに役立ちます。
正式名称と役割の教育
設備や部品の正式名称や原理・役割をしっかり学ぶ機会をつくります。例えば、「この成型機が止まるとライン全体の生産が止まる」ということが分かっていると、目的意識を持って点検や清掃を実施できます。また、正しい名称の使用により現象を的確に表現することはミスコミュニケーションを防ぎます。
マイエリア(担当エリア分け)と実施項目の選定
担当範囲を明確にして、各チームが「ここは自分たちのエリアだ」と認識できるようにします。同時に、そのエリアでどんな点検項目や清掃項目が必要かを明文化しておくと、責任の所在がはっきりし、互いにカバーし合いやすくなります。自分たちのエリアを守るプライドが出れば、保全の5Sは一気に進むものです。
5Sは製造と保全の両方に有用な活動を徹底できてこそ、安定稼働と安定品質が得られます。いつもの5Sに保全をプラスした活動を続けることで、トラブルの未然防止と効率化の推進が期待できます。
※本記事は大阪府工業協会機関誌に掲載された内容を再編集したものです。
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執筆 保全ラボ編集部
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