第12回 「バスタブ曲線信仰」にご用心(後編)
TBMのデメリット1:過剰保全
現在では、TBMに対して、2つのデメリットがあることがわかっています。
その1つ目は、TBMが過剰な保全をしてしまう要因になることです。具体的には、全設備を対象に一律でTBMを適用する計画は、費用的にも時間的にも現実的ではありません。
専任の設備管理員がいる工場でも、TBMで対応する設備は以下のような場合に限られます。
・法令で定期検査が義務付けられている設備
・時間で必ず劣化する工場内の計画塗装
・部品納期が長く突発整備が難しい設備 など
TBMのデメリット2:いじり壊しリスクの増大
ここまでで、TBMのデメリットの2つ目は「保守故障」、俗にいう「いじり壊し」です。これは、整備の必要がない設備にまで手を加えてしまうことで、逆に新たなトラブルや故障を招いてしまうことです。
実際に、こんな『いじり壊し』の例があります。あるモーターから異音がするとの報告を受け、ベアリングの点検・整備を行いました。ベアリング自体に異常は見つからなかったものの、復旧後、異音はむしろ大きくなってしまいました。そして半年後、そのモーターは故障してしまったのです。原因を調べると、モーターの取り付け状態が悪く、ベアリングに継続的な異常負荷がかかり続けていたことが分かりました。整備の際に『ベアリングに異常があるか』だけを確認し、悪い取り付け状態で復旧してしまったのです。
このように「いじり壊し」は、技術的な課題だけでなく、教育や情報共有のあり方とも深く関係しています。「いじり壊し」を防ぐには、こうした要因を踏まえ、日頃から「いじる」機会そのものを減らし、正しい知識を身につけておくことが対策になります。

図:バスタブ曲線
設備の劣化パターンは6種類の曲線がある。その中で、時間とともに故障率が上がる(バスタブ型を含む)パターンでの故障率は全体の8〜10%程度。(出典:John Moubray『Reliability-Centered Maintenance』(1997年)をもとに編集・改変。初出は1978年の米国航空機保全に関する調査。)
いじり壊しの要因と防止策
いじり壊しの要因には以下のようなものがあります。
技術・知識の不足
・内部構造や動作原理、適正な寸法を理解せずに整備
・非調整部を誤っていじる(例:固定ネジを調整ネジと誤認)
・分解手順を守らない(組立のことを考えない)
・専門外の計装(センサーや計器など)・電気系などの整備を行い、不完全な状態で復旧
心理的要因
・焦りから必要な手順を飛ばしてしまう
・早く復旧させたい、という善意が裏目に出る
・「前任者もこうしていた」という思い込みで誤った方法を踏襲
組織・情報不足
・保全履歴や整備手順書が整備されていない
・作業前の打合せが不十分で、認識が曖昧なまま作業を開始
・技術部門との連携不足により、必要な図面・寸法が不明
いじり壊しを防ぐ方法として、そもそも「いじる」頻度を少なくすること、適切に「いじる」ことができるようにすることが求められます。
TBM以外の選択肢「CBM」
CBM(状態基準保全)は整備が必要なタイミングを見極めて点検や整備を計画する保全方式です。これにより、TBMに比べて過剰な整備を避けつつ、壊れる前に対応することができます。そのため、最も経済的な保全方式と言われています。
次回は、このCBMの有用性と具体的な導入の考え方や現場での進め方について、さらに掘り下げてご紹介したいと思います。
※本記事は大阪府工業協会機関誌に掲載された内容を再編集したものです。
